地域とつながるTOP対談

地域や世界とつながりながら学び、
新しい風を吹かせる人に

ジャパネットたかた創業者

髙田明

1948年長崎県生まれ。大阪経済大学卒業後、機械製造メーカーへ就職し通訳として海外駐在を経験。74年に父親が経営するカメラ店へ入社。86年に「（株）たかた」として分離独立。90年にラジオでショッピングを行ったのを機に全国へネットワークを広げ、その後テレビ、チラシ・カタログなどの紙媒体、インターネットや携帯サイトなどでの通販事業を展開。99年に「（株）ジャパネットたかた」へ社名変更。2015年1月に「(株)ジャパネットたかた」の代表を退任し、同時に「（株）A and Live」を設立。2017年4月、プロサッカークラブ「（株）V・ファーレン長崎」の代表取締役社長に就任。2020年1月に「（株）V・ファーレン長崎」の代表取締役社長を退任。

長崎国際大学学長

安東由喜雄

大分県別府市出身。熊本大学医学部を卒業後、同大学第一内科に入局。神経内科科学分野教授、同医学部長、研究部長を務める。2019年長崎国際大学副学長、薬学部教授を経て2020年、同大学学長に就任。世界および日本のアミロイドーシス学会理事長を兼任。

少子高齢化に伴う人口減少などにより、
地域は衰退の一途をたどっていると言われています。
地域が再び輝きを取り戻すためには何が必要で、何をするべきなのか。
長崎・佐世保で誕生し、今や日本を代表する通販会社である
「㈱ジャパネットたかた」の創業者である髙田明氏と安東学長が
これからの地域創生とNIUで学ぶ学生たちに期待することについて語り合いました。

01

地域や世界とつながりながら学び、
新しい風を吹かせる人に。

学長: 　私が本学の学長に就任した2020年は、世界がコロナに翻弄された1年であり、未だにその収束は見えない状況にあります。本学では2020年7月、医学部を擁しない大学では初となるPCR検査センターを、さらに8月には診療所を学内に設置し、学生と教職員を対象に感染症の予防と拡大防止に努めてきました。その後、地域の方々のご要望に応える形で、検査対象を佐世保、県北佐賀にお住まいの方々にまで広げ、これまでに約5,000名の方々にPCR検査を実施しています。検査は根本治療に結びつくものではありませんが、感染拡大を防ぐ一手として役立つものであり、微力ながらも地域に資することができたのではないかと思っています。本学は「地域貢献」を念頭に、安部理事長をはじめ、これまで多くの先達がＮＩＵの「知」を地域の発展に活かせるよう鋭意努力を重ねてきました。髙田社長は長崎平戸でお生まれになり、佐世保で「㈱ジャパネットたかた」を創業され、通販事業を通して長崎から全国へとスケールを広げてこられました。また、長崎・佐世保に軸足を置き、事業を展開されてきたのは、やはり故郷長崎への思い入れが強かったからでしょうか？
髙田: 　大学卒業後、大阪でのサラリーマン生活を経て平戸に帰郷し、家業のカメラ店を手伝うようになりました。平戸から佐世保に出て独立した頃は、全国を目指そうなどとは夢にも思っていませんでした。長崎・佐世保からスタートしたのもたまたまであって、その時々の目の前にあった仕事に最善を尽くしてきただけです。ただ、長崎の歴史を振り返ってみると、鎖国時代の約200年間、日本で唯一海外に開かれていた貿易の窓口が長崎の出島であり、西郷隆盛や大久保利通、坂本龍馬など明治維新で活躍したそうそうたる面々も、ここ長崎を訪れています。異国の文化や進取の精神を絶えず取り込んでいった地という点では大変興味深いものがあり、そういう歴史的背景も後押ししてくれたのかなという想いはあります。

02

意志とソフトパワーの強さが、
地域を、未来を変えていく。

学長: 　本学の教育理念のひとつに「ホスピタリティ精神の涵養」があります。実は、ホスピタリティにはおもてなしや思いやりといった意味のほかに、「異人歓待」という意味があります。まさに、長崎そのものを表す言葉です。長崎には、昔からつねに未知のものを受け入れる素地が備わっていたと言えるかもしれません。髙田社長はこれまでに全国各地を回り、地域創生の現場を訪ねてこられたそうですね。
髙田: 　「㈱ジャパネットたかた」のTV番組企画で40か所以上の地域に足を運びました。どの地域でも共通していたのが少子高齢化に伴う人口減少という課題であり、過疎地だから衰退していくのはしょうがないとあきらめムードに陥っていたことです。内閣府でも助成金などを設けて地域創生をバックアップしていますが、いくら資金だけがあっても地域創生は成功しないと思います。確かに資金は必要です。けれどそれよりもっと大切なのは、そこで暮らす人たちの「自分たちが地域を変えていく」という強い意志です。みんなが「やるぞ！」と思った時に、地域は生まれ変われるのではないでしょうか。現代社会は目まぐるしく変わり続けているものの、人の気持ちは明治維新の時代から、そう変わっていないと思います。ただ、そこには人を惹きつける何か、ソフトパワーが必要です。私は、その1つがサッカーやバスケットボールといったスポーツの力だと考えています。以前、JリーグのV・ファーレン長崎の社長を務めたのも、そのような想いがあったからです。コロナ禍により、V・ファーレン長崎も試合の中止を余儀なくされましたが、無観客で4カ月ぶりに試合が再開された時は、私自身も大きなエネルギーをもらいました。スポーツには老若男女、国や地域を超えて夢や元気を与えてくれるものすごい力があり、コロナ禍の今こそ、そういったパワーが必要だと思っています。

みんなが「やるぞ！」と思った時に、地域は生まれ変わるんです。

03

学生時代は何か1つでいい、
本気でやることが大事

学長: 　　現在、髙田社長は第一線を退かれていらっしゃいますが、「㈱ジャパネットたかた」では、スポーツスタジアムを中心に商業施設やオフィス、ホテルなどを併設した「長崎スタジアムシティプロジェクト」を進めていると伺いました。企業の成長や効率を追求するばかりではなく、長崎の活性化にも精力的に取り組んでいらっしゃる会社の姿勢には、感服するばかりです。スポーツというソフトパワーを通して、長崎から日本を変えていくという髙田社長の想いがしっかりと受け継がれているのでしょう。ところで、髙田社長はどのような学生時代を過ごされましたか？若い頃から高い志を持っていらしたのですか？
髙田: 　あまり褒められた学生ではありませんでした。単位こそ落としはしなかったものの、友人たちと遊んでばかりいました。けれど、大好きな英語の勉強だけは頑張りました。自分の英語のスキルを試すために、何度も大阪万博に通い、外国の方とコミュニケーションをとったりもしました。海外に行きたいという強い想いをもってひたすら勉強した甲斐があり、卒業後に入社した会社では、営業の通訳としてヨーロッパ各地を回ることができました。これから大学に入学する学生さんたちにも、何か1つでいいから頑張れることを見つけてほしいですね。ただし、中途半端はいけません。自分が本当に頑張っているかどうか、頑張る方向が間違っていないかどうか、絶えず自分に問いかけながら本気でやるということが何より大事だと思います。

04

先のことを考えて悩むより、
「今を生きる」ことに注力する。

学長: 　おっしゃる通りです。それと学問は、単に就職に有利なスキルや知識を身につけることでなく、社会のための学問であることを学生たちには忘れてほしくないですね。そのためには実際に地域社会や世界に飛び込んで、自分の目と肌で確かめながら見識を深めていく実学が非常に重要です。ところが、コロナ禍によりあらゆる場面で人と人の交流が分断され、実学に不可欠である密なコミュニケーションがとれなくなっています。長きに及ぶ遠隔授業と自粛生活に心が折れ、休学、退学に追い込まれる学生は全国的にも少なくありません。これは、大学はもちろん、日本にとっても大きな危機です。そこで、本学では2021年の4月から徐々に対面授業を7割まで増やし、クロストークの機会をつくっていきます。この一年、医学的エビデンスの蓄積により、どういう状況であれば感染を阻止することができるかがわかってきました。過剰に規制するのではなく、正しくコロナを恐れ、適切な感染対策を講じることで対面授業や実習を再開していく方針です。
髙田: 　コロナの影響で先が見えないと言われていますが、企業でも将来の見通しが立つのはせいぜい1年です。だから、あまり先のことを考えて思い悩むよりも、学生さんには「今を生きる」ことに注力してほしいですね。感染を予防しながらも自分が今やらなければいけないことに一生懸命取り組む。明日も1年後も、そして10年後も、「今」の連続の先にあるのですから。
学長　長崎はもとより九州・沖縄各地からの入学者が多く、留学生の割合も大きいのが本学の特長です。学生たちには、外洋で長旅を続けながら成長し、生まれ故郷の河川に戻っていく鮭のように、本学で地域や世界とつながりながら学び、やがてはそれぞれの故郷に帰り、置かれた場所で新しい風を吹き込めるような人になってほしいと願っています。今後、「㈱ジャパネットたかた」さんや佐世保市など、官民とさらに連携しながら地域に貢献できる人材づくりを進めていくことで、本学の公私協力型大学としての使命を推進していきたいと考えています。本日はありがとうございました。

学問は、社会のためにあることを忘れてほしくないですね。

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